泣きながら煙草を吸ったすぐあとに歯を磨いて顔を洗っても、肺と指先に残ったニコチンとか胸の奥と目頭に残る赤がわたしを苦しめるように、泣きながら大切なものを失ったすぐあとに笑って健全な日常を過ごしても、心と脳裏に焼き付いた記憶は毎秒美化されてわたしを苦しめる。
ナイトオンザプラネットを聴きながら夜道を歩いても、朝で溶かすことのできないどんよりとした痛みが肩の上に乗っている。
もしも今ある幸せを手放さざるを得ない日が来たとしても、わたしたちの日々はそれは美しい思い出となってことばとなって永遠に大切にしまいこまれるだろう。
それは素晴らしいことだけど、ひどく不幸で悲しいことでもある。
結局ひとりよがりな人生で、何と向き合って何を解決しなければいけないか見極めるのはかなり難しい。
わたしは毎回失敗して、そのたびに悔やんで、それでもこうやって生き続ける。
常に何かに追われている。解決しなきゃいけないと思う。良い子にならなきゃと思う。頭の中で叫びが聞こえるけど、それは自身の声だとまだ分かっている。
漠然と襲いくる何かに怯えながら朝を待つ。