わたしは一回ちゃんと知り合った人のことはもっと知りたくて、誰だろうが愛したくて、どんなに昔のことでもちゃんと憶えてる。
お受験のために東京に引っ越す前、千葉の幼稚園で手紙をくれた千尋ちゃんの横に隠れてもじもじと寂しいと言ったきり真歩先生のエプロンに突っ伏して泣いてしまった海くんのことももちろん憶えてる。
大学時代に恵比寿のHUBで会って、可愛い顔してるねって言ってキスしてくれたあきこさんのことも憶えてる。
けど、わたしが憶えている人は大抵わたしのことを忘れてる。
千尋ちゃんも真歩先生も海くんもあきこさんも多分わたしのことなんて忘れてる。
そしてそれがいい。そうであってほしい。
わたしはちゃんと知り合ってない人には興味がない。噂で聞いた誰々とか、学年が一緒だった丸々とか、知らない。友達ヅテに告白してきた人とか、まともに喋ったことないのにわたしの個人的な噂を嬉々として話してる人とか、本当に知らない。
そういう人に急に知ったような顔されても、困る。そんなんいうなら、あん時ちゃんと話してこいよ。教室にいたなら廊下に出てこいよ。道で通り過ぎたあとヒソヒソ話すなら、出会い頭に殴ってこいよ。クソつまんねぇわたしのインスタにいいねするなら、SNSブロックしろよ。
わがままだけど、人の記憶に残るのは辛い。(人のことは憶えてるのにね)
その場その場で、感じてほしい。
そして、その"場"にいない人のことは、わたし本当に知らないの。ごめんね。
わたしなんか早く忘れて、楽しく過ごしてね。