AY's blog

思ったことをだらだら書いている。読んだら感想とか教えてくれたら嬉しい。

ノンアルコール

ひょんなことから知り合った同じ大学の同い年、学年は2個下の文学部生に誘われて、人生ではじめて下北沢にちゃんと遊びに行った。

11時の待ち合わせに10分も遅れた。

 


トロワシャンブルっていう喫茶店で850円のベイクドチーズケーキセットを食べながら、彼は自分の両腕と肩甲骨、胸元に入ったタトゥーについて熱心に話してくれて、わたしはレアチーズケーキを頬張りながらふんふんと話を聞いた。日本人っていうアイデンティティがあるから和柄が良かったんだって。着物の本を3冊買って、2ヶ月以上かけて彫り師の人と話し合って決めたんだと自慢げだった。見合うな〜とも、似合うな〜とも思った。じいちゃんとばあちゃんが死んだら、左腕の彼岸花の傍に命日を入れるらしい。わたしも何人かの友人と、若くして死んだら左胸の下に名前を彫ろうって約束してたけど、命日の方がいいなって思い直した。

コーヒーは思ったよりも酸っぱくて、酸っぱくない?って聞いたのに。って少し憤ったんだけど、それもそれで美味しかった、ケーキもあるし。

ヴィヴィアンのシガレットケースにPeaceを入れてて、何本か吸ってた。早死にするねって言ったら、30歳くらいで死にたいし、って言ってた。綺麗なまま、全身のタトゥーを見せつけながら棺桶に入りたいんだって。少し分かるけど、きっとわたしは現世への未練が強すぎてだらだらとしがみつく。余命宣告されてもなお、だらだらと。大切な人が何人もいるんだもん。

コーヒーもケーキも無くなって3杯目の水が注がれたくらいで、俺ら長居しすぎだね、って言って席を立ちお会計をした。お財布はギャルソンで、さすがだなって思った。あとで聞いたら香水もギャルソンだった。やっぱりなって思った。ご馳走様って大声で言ってた。つられて大きな声を出した。

 


お店を出て古着屋に向かった。わたしはカレーとか食べたかったけど、彼は絶対に一日3食とか食べないタイプの人間だから黙ってた。

古着屋で彼の服へのこだわりを知って、少し嫉妬した。用語とか分かんないし、店員さんと親しそうだし。結局、8800円でサンローランのカラフルなトップスを買ってて、それはもう本当にお似合いで、ここに着てきたかと思うくらい、もう既に君のものくらい似合ってるよって言ったら笑ってた。水面みたいにゆらゆら笑うなぁ。

わたしはなかなか心にくるものが見つけられなくて、電車で原宿に移動することにした。

夫婦でやってる狭い古着屋さんで、そこでわたしは散々におだてたれ、いい気になって、2着も買ってしまった。お店を出た瞬間、やっちゃったなぁ…って呟いたら、また水面が揺れた。

 


原宿から渋谷まで散歩して、また彼の行きつけの羽當っていう喫茶店に行った。そこで彼はコーヒーとかぼちゃプリンを上品に嗜みながら、元恋人の話をしてた。同じものを目の前に置き、またふんふんと聞いた。終わってしまった人を尊重し続けられるのは羨ましい。恋愛観とか、家族とかの話をした。彼は誰に対してもリスペクトがあるようで、だから自分自身もリスペクト出来ているような感じだ。良いんじゃないでしょうか。わたしには出来ないことだから。わたし自身の恋愛の話も、少しした。本当、言えるところだけ。

Peaceをまた吸った。この強くて甘いタバコが、平和っていう名前なのなんなの。平和って絶対もっと、あやふや。

 


18時に喫茶店を出て、夜ご飯は家族と食べるから、30分だけ散歩しようって言った。渋谷って散歩っていうことばにそぐわない。数時間前の下北がもう恋しくなって、寂しくなったけど、別に思い入れとかないんだった。渋谷にも別にない。そう思ったら、もっと寂しくなった。あと3日で満月になる不完全な月が、さらにそれを助長して、紛らわすために下を見てたらたくさんの吐瀉物に出会った。やっぱり散歩にそぐわなさすぎる。

帰り際、良いお年を〜ってお決まりのセリフを言い忘れ、ただいつものようにお別れした。はじめて2人で会ったけど。

 


2020年後半は、立て続けにかなり良い出会いをしていて幸せだ。彼らを会わせたいような会って欲しくないような、複雑な気分だ。

もう終わるね、今年。

それだけ。